睡眠・不眠 #61
「寝酒」「ナイトキャップ」と眠りの質——気分はラクでも深睡眠は別問題
結論(先に)
お酒は入眠を早める効果がある一方で、睡眠後半のREM睡眠を減らし、中途覚醒を増やします。「寝酒をやめると眠れない」と感じる場合は依存が形成されている可能性があります。習慣的な飲酒を急にやめると離脱症状が起きる場合があるため、変化させる際はかかりつけ医に相談することを勧めます。(→ #56 飲酒と肝臓・消化器)
読者の状況
- 毎晩お酒がないと眠れない気がしている
- 飲むと寝つきは良いが、夜中に何度も目が覚める
- 「寝酒は体に悪い」と知りつつやめられない
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| お酒で寝つきが良い=良い睡眠 | 入眠は早まるが深い睡眠(SWS)・REM睡眠が減少し睡眠の質は下がる(※1) |
| 少量なら問題ない | 少量でもREM睡眠への影響は用量依存的に現れる(※1) |
| お酒をやめれば睡眠はすぐ戻る | 習慣飲酒後の禁酒初期はREM睡眠の「リバウンド」(増加・悪夢)が起きやすい(※2) |
根拠に基づく一般向け整理
アルコールが睡眠に与える影響
飲酒後の睡眠は次のように変化します(※1, ※2):
- 前半(入眠直後):深い睡眠(SWS:Slow Wave Sleep)が増加し、入眠が早まる
- 後半(代謝後):REM睡眠が増加する「リバウンド」が起き、浅い眠り・覚醒が増える
- 全体:睡眠の断片化・いびきの増加・OSAの悪化
習慣化と耐性形成
毎晩飲み続けると入眠効果への耐性が生じ、同じ量では効かなくなります。量が増えるか「飲まないと眠れない」という状態になりやすいです(※2)。
断酒初期のREM睡眠リバウンド
習慣的に飲酒していた方が急に断酒すると、抑圧されていたREM睡眠が増加し、生々しい夢・悪夢・睡眠の断片化が出やすくなります。これが「やめると眠れない」の一因です(※2)。離脱症状(震え・発汗・不安)がある場合は医療機関への相談が必要です。
CBT-Iと飲酒習慣
CBT-Iでは睡眠衛生として飲酒習慣の見直しを含みます(→ #4)。完全禁酒が難しい場合でも、就寝3〜4時間前には飲み終えることで影響を減らせる可能性があります。
今日から試せる行動
- 「飲まない日」の睡眠の質を記録し、飲んだ日と比べてみる
- 就寝3〜4時間前を飲酒の締め切りとして試してみる
- 「お酒なしでは眠れない」と感じる場合はかかりつけ医に相談する
受診・紹介の目安
以下はかかりつけ医・精神科・アルコール専門外来へ:
- 「飲まないと眠れない」が続く(依存の可能性)
- 急に断酒したら震え・発汗・強い不安が出た(離脱症状)
- 飲酒量が増え続けている
免責
本記事は一般向けの健康情報です。アルコール依存が疑われる場合の急な断酒は危険です。必ず医師に相談してください。
参考文献
国際文献
- ※1 Roehrs T, Roth T. Sleep, sleepiness, and alcohol use. Alcohol Res Health. 2001;25(2):101-109.
- ※2 Brower KJ. Alcohol’s effects on sleep in alcoholics. Alcohol Res Health. 2001;25(2):110-125.
国内文献
- ※3 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」. 精神医学 2025; 67(5)