睡眠・不眠 #59

感染後も続く強い疲れと眠り——言い分けと主治医へ相談する目安(一般論)


結論(先に)

感染症から回復した後も、強い倦怠感・睡眠の乱れ・認知の霞が長引く場合があります。病名の断定はこの記事の範囲外ですが、「感染後に眠りと体調が戻らない」経験は、かかりつけ医・専門医に共有する価値があります。まず感染症や他の病気の遷延・再燃の評価が優先されます。


読者の状況

  • 感染症にかかってから数週〜数か月、倦怠感や眠りの問題が続いている
  • 「もう治っているはず」と言われるが体は回復した感じがしない
  • 睡眠の質が感染前と変わったような気がする

よくある誤解

誤解実際
検査が正常なら問題ない倦怠感・睡眠障害は血液検査に反映されにくいが本人の困難は実在する
安静にしていれば治る状態によっては活動量の慎重な調整(PEM:労作後倦怠感への対処)が有効な場合がある(※1)
「気のせい」「うつ」として一括りにできる感染後疲労には複数の要因が重なることがあり、精神的な問題だけではない場合が多い

根拠に基づく一般向け整理

感染後症状と睡眠

感染症(インフルエンザ、COVID-19など)の後に倦怠感・認知の霞・睡眠障害が遷延する現象は、様々な感染症で報告されています(※2)。睡眠の問題としては、眠れない(不眠)・眠っても疲れが取れない・日中の強い眠気が複合的に出ることがあります。

PEM(労作後倦怠感)への注意

一部の感染後疲労では、少しの活動(身体的・認知的)の後に症状が悪化する「PEM(post-exertional malaise:労作後倦怠感)」が見られます(※1)。このタイプでは、無理な運動や活動推進が逆効果になる場合があり、従来の不眠治療(例:睡眠制限法)の適用に慎重な判断が必要です。主治医と相談したうえで対応方針を決めることが重要です。

鑑別が必要な他の状態

感染後に似た症状を示す状態として、甲状腺機能異常(→ #52)・鉄欠乏(→ #57)・うつ・睡眠時無呼吸(→ #21)などがあります。これらの評価を先に行うことが推奨されます。

オンライン相談の役割

感染後症状の評価・管理はかかりつけ医・専門外来が主役です。CBT-Iや睡眠衛生指導の適用はPEMの有無などを踏まえた個別判断が必要であり、オンライン睡眠相談では状況の整理と受診のサポートが主な役割になります。


今日から試せる行動

  • 「感染後からの経過」を時系列で書き出し(症状・活動量の変化)、かかりつけ医に持参する
  • 甲状腺・鉄・血液一般の基本検査を確認する
  • 活動後に症状が悪化するパターンがある場合はPEMの可能性を主治医に伝える

受診・紹介の目安

以下はかかりつけ医・専門外来へ:

  • 感染後2か月以上、倦怠感・睡眠障害・認知の霞が続く
  • 少しの活動後に症状が大幅に悪化する(PEMの疑い)
  • 甲状腺・貧血・うつなど他の原因の評価が終わっていない

免責

本記事は一般向けの健康情報であり、特定の疾患の診断を行うものではありません。感染後の遷延症状は個人差が大きく、医療機関での個別評価が必要です。


参考文献

国際文献

  • ※1 Jason LA, et al. Post-exertional malaise among people with long COVID compared to myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome (ME/CFS). Work. 2021;69(4):1219-1229.
  • ※2 Greenhalgh T, et al. Management of post-acute covid-19 in primary care. BMJ. 2020;370:m3026.

国内文献

  • ※3 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」. 精神医学 2025; 67(5)