睡眠・不眠 #39
慢性痛と不眠は、なぜいっしょに起きやすいのか
結論(先に)
痛みで眠れないだけでなく、眠れないことで痛みをつらく感じやすくなるという往復が起こりうるとされています(※1)。大切なのは「痛みを我慢する」でも「眠れないから布団に長くいる」でもなく、痛みと眠りの悪循環を言葉にすることです。CBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia:不眠症に対する認知行動療法)は慢性筋骨格痛患者の不眠に有効である可能性が示されています(※2)。痛みそのものの診断・治療は整形外科・ペインクリニック・リハビリとの連携が必要です。
読者の状況
- 痛みで夜中に目が覚める
- 横になると痛みが気になって眠れない
- 寝不足の日ほど痛みが強く感じる
- 痛み止め・睡眠薬・湿布・リハビリの関係が整理できない
よくある誤解
| 誤解 | 実際の考え方 |
|---|---|
| 痛みがあるなら眠れなくて当然 | 当然で終わらせず、悪循環を減らす余地がある |
| 睡眠を診ても痛みには関係ない | 睡眠不足は痛みの感じ方・気分に影響する |
| 布団に長くいれば回復する | 眠れないまま長く横になると不眠が固定化することがある |
根拠に基づく一般向け整理
睡眠と痛みの双方向の関係
Finan ら(2013)のレビューでは、睡眠障害と慢性痛の関係は双方向であり、特に睡眠の乱れがその後の痛みの悪化・慢性化を予測する可能性が示されています(※1)。睡眠不足は痛覚閾値を下げ(=痛みをより強く感じさせる)、回復感を損ないます。
痛みと不眠のループ
痛み → 夜間覚醒・入眠困難
↑ ↓
睡眠不足 ← 日中の活動低下・気分の落ち込み
このループを断ち切るには、痛みの治療と睡眠の行動面の整理の両方が必要です。
CBT-I の可能性
Salazar-Mendez ら(2024)の系統的レビューでは、慢性筋骨格痛患者の不眠に対する CBT-I が睡眠改善に有効であることが示されています(※2)。ただし、痛みそのものを治療するわけではなく、睡眠に影響する行動パターン(長時間就床・刺激統御の乱れなど)を整えることが目的です。
オンラインと対面の役割分担
オンライン睡眠相談:行動面の整理・CBT-I の概念説明・記録のサポート
整形外科・ペインクリニック:痛みの原因評価・鎮痛薬の調整・注射・手術
今日から試せる行動
- 夜間に痛みで起きた時刻を3日だけ記録する
- 「痛みの強さ」と「眠れなさ」を別々に10点満点で書く
- 日中に横になった時間・昼寝・活動量も一緒にメモする
受診・紹介の目安
- 急に強い痛みが出た・発熱がある → 早めに対面診療
- がんの既往がある・体重減少を伴う痛み → 緊急評価
- しびれ・麻痺がある(→ 神経学的評価)
- 排尿・排便の異常がある → 緊急
- 術後に痛みが悪化している → 手術した医療機関へ連絡
免責
一般向け情報であり、痛みや不眠の個別診断・治療を約束するものではありません。
参考文献
国際文献
- ※1 Finan PH, Goodin BR, Smith MT. The association of sleep and pain: an update and a path forward. J Pain. 2013;14(12):1539-1552. doi:10.1016/j.jpain.2013.08.007
- ※2 Salazar-Mendez J, et al. Cognitive behavioral therapy for insomnia in people with chronic musculoskeletal pain: a systematic review and dose-response meta-analysis. Sleep Med. 2024;122:20-26. doi:10.1016/j.sleep.2024.07.031
- ※3 Edinger JD, et al. Behavioral and Psychological Treatments for Chronic Insomnia Disorder in Adults: An AASM Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17(2):255-262.
国内文献
- ※4 上野太郎. プログラム医療機器を用いた不眠症治療としての認知行動療法. 精神医学 2025; 67(1)
- ※5 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」. 精神医学 2025; 67(5)