睡眠・不眠 #35

中枢性過眠症の話——オンライン相談の限界も含めて


結論(先に)

中枢性過眠症(代表例:ナルコレプシー・特発性過眠症)は、PSG(polysomnography:終夜睡眠ポリグラフ検査)・MSLT(Multiple Sleep Latency Test:反復睡眠潜時検査)・脳波・専門評価が中心になる病態です(※1)。日中の眠気は OSA(Obstructive Sleep Apnea:閉塞性睡眠時無呼吸)や睡眠不足とも混同されやすいため、まずその除外が重要です(→ #20・16)。オンラインだけで確定診断・治療開始を行うことはなく、睡眠専門・神経内科への紹介が基本です。


読者の状況

  • 長く寝ても眠い
  • 授業や会議中に寝落ちする
  • 怠けていると思われて困っている

よくある誤解

誤解実際
眠いのは睡眠不足だけ中枢性過眠症・OSA・薬剤・うつなどがある
根性で起きていればよい安全と生活に関わる疾患のことがある
オンラインで診断できる専門検査(PSG・MSLT)が必要になる

根拠に基づく一般向け整理

ナルコレプシーの特徴

Dauvilliers ら(2007)のレビューでは、ナルコレプシー1型の特徴的な症状として(※2):

  • 日中突然に制御しにくい眠気・居眠り
  • 情動脱力発作(cataplexy):笑ったり驚いたりしたときに力が抜ける
  • 入眠時・覚醒時幻覚:眠りに落ちる瞬間や目覚め際の幻覚
  • 睡眠麻痺(金縛り)

ナルコレプシー2型(情動脱力発作なし)や特発性過眠症は上記の典型症状がないため見逃されやすいです。

診断に必要な検査

AASM(American Academy of Sleep Medicine:米国睡眠医学会)のガイドラインでは(※1):

  • PSG(夜間睡眠の記録)
  • MSLT(翌日に行う昼間の眠気の客観的検査。5回の昼寝機会を設け、入眠潜時を測定)
  • 場合によって髄液オレキシン測定・HLA タイピング

これらは専門施設での実施が必要です。

オンラインでできること

  • 生活の安全(運転・機械操作の確認)
  • OSA や睡眠不足との鑑別の入口(→ #20・16)
  • 専門受診のタイミングの説明
  • 症状の整理と受診先の候補の相談

今日から試せる行動

  • 2週間ほど睡眠時間・昼間の眠気の強さを記録する
  • いびき・無呼吸の指摘を確認する
  • 情動脱力発作・金縛り・入眠時幻覚の有無をメモする
  • 運転中の眠気がある場合は受診まで長距離運転を控える

受診・紹介の目安

  • 日中の眠気で生活に著しい支障がある
  • 運転中・機械操作中の眠気(安全上の緊急性)
  • 笑ったとき力が抜ける(情動脱力発作の疑い)
  • 長時間眠っても常に眠気が残る

免責

一般向け概説です。診断・治療方針は睡眠専門・神経内科で行います。オンラインで診断を完結させることはありません。


参考文献

国際文献

  • ※1 Maski K, et al. Treatment of Central Disorders of Hypersomnolence: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17(9):1881-1893.
  • ※2 Dauvilliers Y, et al. Narcolepsy with cataplexy. Lancet. 2007;369(9560):499-511.
  • ※3 American Academy of Sleep Medicine. International Classification of Sleep Disorders, 3rd ed. Darien, IL: AASM; 2014.

国内文献

  • ※4 特集「精神科診療における臨床評価尺度・検査を極める」:中枢性過眠症とその検査法. 精神医学 2024; 66(5)