睡眠・不眠 #30

高齢者の早朝覚醒と日中の眠気——何を整えるか


結論(先に)

高齢では睡眠の深さや連続性が変化しやすく、早めに目が覚えること自体は一定の範囲で生理的な側面もあります(※1)。一方、強い日中眠気・夜間のいびきが重なるときは、**OSA(Obstructive Sleep Apnea:閉塞性睡眠時無呼吸)**など鑑別が必要な病態があります(→ #19〜16)。転倒・運転の安全も視野に入れます。睡眠薬の自己調整は危険です——特に BZD(benzodiazepine:ベンゾジアゼピン系薬)は高齢者の転倒・認知機能低下リスクに関連するため、主治医と相談してください(→ #23)。


読者の状況

  • 朝4時ごろ目が覚めてしまう
  • 昼間にうとうとする
  • 睡眠薬を増やすべきか迷っている

よくある誤解

誤解実際
高齢者は眠れなくて当然改善できる原因が隠れていることもある
昼寝すれば夜の不足を補える長い昼寝は夜の睡眠をさらに浅くすることがある
睡眠薬を増やせば解決転倒・ふらつき・認知機能低下のリスクに注意が必要

根拠に基づく一般向け整理

加齢による睡眠変化

加齢とともに深睡眠(徐波睡眠)が減少し、中途覚醒・早朝覚醒が増えやすくなります(※1)。これは生理的変化の一部ですが、以下の要因が重なると「年のせい」以上に悪化します:

  • OSA(いびき・夜間の呼吸停止)による睡眠分断
  • 薬の影響(睡眠薬・抗コリン薬・降圧薬・痛み止めなど)
  • うつ・認知症の初期所見としての睡眠変化(→ #18)
  • 夜間頻尿痛みかゆみなどによる覚醒

高齢者における BZD 系薬のリスク

ACP(American College of Physicians:米国内科学会)は、高齢者に対してベンゾジアゼピン系薬(BZD)の長期使用を見直し、CBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia:不眠症に対する認知行動療法)を優先するよう推奨しています(※2)。Beers Criteria でも BZD は高齢者の転倒・認知機能低下のリスク薬として挙げられています(※3)。

生活介入のポイント

  • 朝の光と活動で昼夜のメリハリをつける
  • 長すぎる昼寝が夜を圧迫していないか確認(20分程度に留める)
  • カフェインのタイミング(→ #10)
  • 夜間転倒を避ける環境(足元の照明・段差の解消)

今日から試せる行動

  • 起床時刻を一定にする
  • 午前中に屋外の光を浴びる
  • 昼寝は15〜20分以内、午後3時前に済ませる
  • 夜間転倒を避ける環境を整える(トイレまでの経路に照明を)

受診・紹介の目安

  • 日中眠気が強く、運転や生活に支障がある
  • いびきや無呼吸がある(→ #19〜16)
  • 気分の落ち込みが続く(→ #18)
  • 転倒した、または転倒リスクが高い
  • 睡眠薬の用量が増えている(→ 主治医に相談)

免責

一般向け概説です。高齢者の複数疾患・ポリファーマシーは主治医と相談してください。睡眠薬の自己調整は行わないでください。


参考文献

国際文献

  • ※1 Ohayon MM, et al. Meta-analysis of quantitative sleep parameters from childhood to old age in healthy individuals. Sleep. 2004;27(7):1255-1273.
  • ※2 Qaseem A, et al. Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults. Ann Intern Med. 2016;165(2):125-133.
  • ※3 American Geriatrics Society 2019 Beers Criteria Update Expert Panel. American Geriatrics Society 2019 Updated AGS Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2019;67(4):674-694.

国内文献

  • ※4 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」:高齢者の睡眠・早朝覚醒・日中眠気 等. 精神医学 2025; 67(5)