睡眠・不眠 #26
思春期の起床困難と睡眠相の話
結論(先に)
思春期は睡眠相が遅めにずれやすいという生理的な側面があります(※1)。「怠け」だけで片づけず、光・起床時刻・スクリーンを現実的に調整しつつ、学校・家庭で話せる支援を探すのが良いです。欠席が続き機能が落ちる場合は、**DSWPD(Delayed Sleep-Wake Phase Disorder:睡眠・覚醒相後退障害)**や自律神経・気分症状も含めた専門の評価を検討してください。
読者の状況
- 中高生の子どもが朝起きられない
- 夜は元気で、朝だけ極端につらそう
- 遅刻・欠席が続き、親子で疲れている
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 朝起きないのは気持ちや意志の問題 | 体内時計や自律神経、気分症状が関係することもある |
| 早く寝かせれば解決する | 眠気が来る時刻自体が後ろへずれている場合がある |
| 休日に寝かせれば回復する | 休日の大きな寝坊でさらに夜型化することがある |
根拠に基づく一般向け整理
思春期の睡眠相後退
Crowley ら(2014)のレビューでは、思春期に見られる睡眠位相の遅れは生理的プロセスであり、メラトニン分泌の遅れや概日リズムの変化が関与するとされています(※1)。早朝の学校開始時間とのミスマッチが、睡眠不足・学業不振・気分症状と関連するという報告もあります(※2)。
DSWPD との鑑別
AASM の概日リズム睡眠覚醒障害ガイドラインでは、DSWPD は就寝・起床が社会生活に著しく合わない状態が慢性的に続く場合に診断される疾患であり、光療法やメラトニンなど専門的な介入が必要です(※3)。自己判断でのメラトニン使用は避け、医師に相談してください。
起立性調節障害との重なり
起床困難・朝の立ちくらみ・動悸がある場合は、起立性調節障害(OD:Orthostatic Dysregulation)の鑑別が必要なことがあります。小児科での評価が適切です。
家庭で試しやすいこと(一般論)
- 週末だけ極端に遅く寝ない(平日との差を少し縮める)
- 朝の光を取り入れる時間を確保する
- 就寝前の画面を減らす(→ #13 の考え方を家族で共有)
- 「遅いこと」を責めず、具体的な行動に話を絞る
今日から試せる行動
- 起床時刻と登校状況を1週間記録する
- 夜のスマホ使用を寝室から遠ざける
- 朝に光を浴びる(カーテンを開けるだけでもよい)
- 家族で責める会話を減らし、「何時に寝たか」より「朝の困り感」を共有する
受診・紹介の目安
- 欠席が続き日常生活が著しく困難
- 朝の立ちくらみ・動悸が強い(起立性調節障害の疑い)
- 気分の落ち込み・不安が強い(→ #18)
- 昼夜逆転が固定し自分では改善できない
免責
一般向け概説です。診断名の付与や学校対応の指示はできません。メラトニンや光療法は医師の指示のもとで使用してください。
参考文献
国際文献
- ※1 Crowley SJ, et al. A longitudinal assessment of sleep timing, circadian phase, and phase angle of entrainment across human adolescence. PLoS One. 2014;9(11):e112199.
- ※2 Owens JA, et al. School Start Times for Adolescents. Pediatrics. 2014;134(3):642-649.
- ※3 Auger RR, et al. Clinical Practice Guideline for the Treatment of Intrinsic Circadian Rhythm Sleep-Wake Disorders. J Clin Sleep Med. 2015;11(10):1199-1236.
国内文献
- ※4 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」:思春期、睡眠相 等. 精神医学 2025; 67(5)