睡眠・不眠 #14

「眠りの質が悪い」と感じたとき最初の着眼点


結論(先に)

「眠りの質が悪い」という主観は、脳波で測った客観的な睡眠深度やウェアラブルのスコアと必ずしも一致しません。数値に一喜一憂するより、まず「何が困っているか」を分けて考えることが大切です——寝つけないのか・夜中に起きるのか・朝早く起きるのか・寝ても回復しないのか。いずれかに当てはまり、かつ強い日中眠気・いびき・無呼吸の疑いがある場合は早めに医療機関へ。


読者の状況

  • スマートウォッチの睡眠スコアが低く心配になっている
  • 「深い眠りが少ない」と表示されたが何をすればよいかわからない
  • よく眠れた感じがしないが原因が特定できない

よくある誤解

誤解実際
ウェアラブルのスコアが正確な健康指標市販機器の睡眠段階分類精度は PSG と比べ限定的(感度 50〜86%、機種差大)(※1)
深睡眠が少ない表示=病的深睡眠量は年齢・体調・前夜の活動量で変動し、「少ない」だけでは判断できない
「スコアを上げれば健康」スコアへの過剰な執着がかえって睡眠不安を強める「オルソソムニア(Orthosomnia)」になりうる(※2)

根拠に基づく一般向け整理

「質」を分けて聞く

同じ「質が悪い」でも対応は変わります:

訴え関連する問題
寝つけない(入眠困難)刺激統御・生活リズム・不安への対処(#4〜12 参照)
夜中に起きる(中途覚醒)睡眠制限・疼痛・OSA(→ #21)・アルコール
朝早く起きる(早朝覚醒)うつ・高齢による概日リズム前進・過眠症との鑑別
寝ても回復しない(熟眠感なし)OSA(→ #19〜16)・うつ・甲状腺疾患を除外

AASM(American Academy of Sleep Medicine:米国睡眠医学会)/SRS(Sleep Research Society:睡眠研究学会)の睡眠時間合意声明(2015)では、十分な睡眠時間を確保しながら「寝ても休めない」場合は睡眠時間の問題だけでなく睡眠の質・合併疾患を評価することが重要とされています(※3)。

ウェアラブルの精度

JMIR mHealth(2023)の 11 機種を対象とした多施設検証研究では、睡眠・覚醒の判定は感度 95% 以上を示しましたが、**睡眠段階の分類精度は 50〜86%**と機種によりばらつきが大きく、PSG の代替にはならないことが示されています(※1)。

着眼点の順序

  1. 起床・就寝時刻のブレ(平日/休日差が 1.5 時間以上か)
  2. カフェイン・飲酒のタイミング
  3. 寝室の光・スマホ(就寝 60〜90 分前の刺激)
  4. 強い日中眠気の有無(これがある場合は赤旗)

赤旗(強い日中眠気・いびき・運転中の眠気)がある場合は生活面の整理だけで済ませず、早めに受診してください。


今日から試せる行動

  • ウェアラブルの「スコア」を毎朝確認する習慣をやめてみる(1 週間データを見ない期間を設けて主観的な眠気と比較)
  • 朝起きたときの「疲れが取れた感じ」を 1〜10 で 1 週間記録する
  • 「寝つけない・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠感なし」のどれが一番困るかを整理する

受診・紹介の目安

  • 強い日中眠気(食後だけでなく、会話中・運転中も)
  • いびきの指摘・無呼吸の疑い(→ #19, #21)
  • 気分の落ち込み・痛み・頻尿・更年期症状が睡眠に影響している場合

免責

本記事は一般向け情報です。機器の表示は診断ではありません。診断・治療は医師にご相談ください。


参考文献

国際文献

  • ※1 Chinoy ED, et al. Accuracy of 11 Wearable, Nearable, and Airable Consumer Sleep Trackers. JMIR Mhealth Uhealth. 2023;11:e50983.
  • ※2 Reid A, et al. Orthosomnia: Are Some Patients Taking the Quantified Self Too Far? J Clin Sleep Med. 2017;13(2):351-354.
  • ※3 Watson NF, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult. J Clin Sleep Med. 2015;11(6):591-592.

国内文献

  • ※4 特集「睡眠の正しい理解を促す70のトリビア」記事7・8. 精神医学 2025; 67(5)
  • ※5 曽我純也, 河邉憲太郎, 堀内史枝. デジタルデバイスを利用した睡眠障害の治療. 精神医学 2025; 67(4)