男性の更年期 #37

市販の精力剤・サプリを選ぶときの注意——規制・成分・安全性の話


結論(先に)

「精力剤」として販売されるOTC(Over The Counter:市販薬・健康食品)製品には、医薬品と健康食品が混在しており、その規制・安全性・効果は大きく異なります。未承認の有効成分や過剰量の成分を含む製品が問題になることがあり、購入前に成分・発売元・認証の有無を確認することが重要です。性機能・活力の低下が続く場合は、まず医師への相談を優先してください。


読者の状況

  • 「ドラッグストアで精力剤を見かけるが、何を選んでよいかわからない」
  • 「サプリと医薬品の違いがよくわからない」
  • 「ネット通販で海外製のサプリを買おうとしている」
  • 「活力低下の悩みを、病院に行く前にまず自分で解決しようとしている」
  • 「広告に出てくる成分名を見ても何が何かわからない」

よくある誤解

誤解実際
市販品はすべて安全性が確認されている健康食品は医薬品のような安全性審査を受けていない
有名なブランドなら成分が正確に表示されている第三者認証のない製品では成分量の正確さが保証されない
海外の「天然成分100%」は安全海外サプリには未承認医薬品成分が混入した事例がある(※1)
ED・性欲低下はサプリで解決できる医学的な原因(LOH・糖尿病・心疾患)がある場合はサプリでは対処できない

根拠に基づく一般向け整理

OTC製品の分類を理解する

日本で市販される製品は大きく以下に分類されます(※2)。

第1類〜第3類医薬品(OTC医薬品)
薬機法に基づき有効性・安全性が審査された医薬品。成分・用量・適応が法的に管理されています。

機能性表示食品
事業者が科学的根拠を消費者庁に届け出た上で機能を表示できる食品。医薬品のような審査はなく、あくまで「食品」です(→ #36)。

健康食品・一般食品
有効性・安全性についての法的審査なし。効能・効果の表示は薬機法上禁止されていますが、広告表現のグレーゾーンが多数存在します。

「精力剤」として販売される市販品の多くは、医薬品ではなく健康食品として分類されます。

注意が必要な成分・状況

シルデナフィル類似成分の混入問題
ED治療薬(シルデナフィルなど)は処方薬であり、市販の健康食品に含めることは禁止されています。しかし、海外製のサプリや一部のOTC製品に類似成分が混入していた事例が国内外で報告されています(※1)。心臓病・降圧薬服用中の方が使用すると重篤な低血圧を起こす可能性があります。

ホルモン様物質の含有
一部のサプリに植物由来のホルモン様物質(DHEA・エピアンドロステロンなど)が含まれている場合があります。DHEAは日本では医薬品に分類されており、一般の健康食品として販売できません(※2)。

重金属・農薬汚染のリスク
海外のサプリでは、重金属(鉛・水銀・カドミウム)や農薬の混入が報告されている製品があります(※3)。第三者機関の認証(NSF・USP・Informed Sportなど)がある製品は品質管理がより厳格です。

安全な選び方のポイント

確認ポイント望ましい状態
製造国・販売元国内メーカー・薬局での取り扱い
第三者認証NSF・USP・Informed Sport などの認証マーク
成分表示全成分・配合量が明記されている
広告表現「必ず効く」「○○を治す」などの断定表現がない
価格極端に安い海外通販品は要注意

ED・性欲低下の医学的な背景

活力・性欲の低下やED(勃起障害)は、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)(→ #1・#7)だけでなく、糖尿病・高血圧・動脈硬化・うつ病・薬の副作用など多様な原因があります(※4)。

これらはサプリでは対処できないことが多く、医師による診断・治療が必要な場合があります。「EDやパフォーマンスの問題はサプリで解決」と思ったまま受診が遅れると、背景の疾患の発見が遅れるリスクがあります。

ED治療薬(PDE5阻害薬)は処方薬として泌尿器科・内科で処方されます。市販のサプリとは別物であり、自己判断での使用は適切ではありません(→ #13)。


今日から試せる行動

  • 現在使用中のサプリ・精力剤のリストを作り、医師・薬剤師に見せる
  • 海外通販でのサプリ購入は、第三者認証の有無を確認してから決める
  • 「サプリより先に受診」を選択肢として検討する(→ #13・#12)
  • 処方薬を服用中の場合、新しいサプリを始める前に必ず薬剤師か医師に確認する

受診・紹介の目安

以下の場合は受診を優先してください。

  • 赤旗症状:サプリ・精力剤を使用後に動悸・頭痛・血圧の著しい変動がある(→ 速やかに服用中止して受診)
  • 赤旗症状:ED・性欲低下に加え、胸痛・息切れ・下肢のむくみがある(心血管疾患の可能性)
  • 処方薬(特に降圧薬・硝酸薬)を服用中にED治療を検討している(→ 必ず主治医へ相談)
  • 性機能の変化が数か月以上続いており、生活への影響が大きい

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品の推奨または否定を行うものではありません。個々の製品・成分の適否については、医師・薬剤師にご相談ください。


参考文献

国内文献

※2 厚生労働省「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)の概要」
消費者庁「機能性表示食品制度について」(最新版参照)

国際文献

※1 Balayssac S, et al. Detection of sildenafil analogues in herbal supplements for erectile dysfunction. J Sex Med. 2012;9(1):292-301.
※3 Gahche JJ, et al. Dietary supplement use was very high among older adults in the United States in 2011-2014. J Nutr. 2017;147(10):1968-1976.
※4 Meldrum DR, et al. Erectile dysfunction, obesity, dyslipidemia, and the metabolic syndrome. Endocrinol Metab Clin North Am. 2011;40(1):167-186.