男性の更年期 #36

漢方やサプリは「万能」ではない——情報の正しい選び方


結論(先に)

健康食品・サプリメント・漢方薬には有用な可能性があるものもある一方、科学的な根拠(エビデンス)の質にはばらつきがあり、「男性ホルモンを上げる」「誰でも効く」という表現は法的に問題がある場合があります。情報を選ぶ際には「誰が・何を根拠に言っているか」を確認し、服用前は医師・薬剤師への相談を習慣にしてください。


読者の状況

  • 「ネットで見たサプリを試してみたいが、本当に効くのか不安」
  • 「漢方は自然由来だから安全だと思っていた」
  • 「論文や研究という言葉が広告に出てくると信じてしまう」
  • 「病院に行かなくてもサプリで改善できると思っていた」
  • 「何種類もサプリを飲んでいるが整理したい」

よくある誤解

誤解実際
自然由来・漢方は副作用がない漢方薬でも薬物相互作用・副作用・禁忌がある(※1)
「臨床試験で確認」は科学的証明と同義試験規模・条件・発表媒体によって信頼性は大きく異なる
高価なサプリほど効果が高い価格とエビデンスの質は比例しない
医薬品でないから何を飲んでも安全医薬品との相互作用・過剰摂取のリスクがある

根拠に基づく一般向け整理

サプリメント・健康食品の法的位置づけ

日本では食品と医薬品は区別されています(※2)。

  • 医薬品:有効性・安全性が審査され、疾患の治療・予防に使用できる
  • 機能性表示食品:事業者が科学的根拠を届け出た上で特定の機能を表示できる(ただし医薬品のような審査はない)
  • 健康食品・サプリメント(一般):特定の効能を標榜することは薬機法上禁止されている

「男性ホルモンを増やす」「LOH症候群を改善する」などの表現は、医薬品でない製品には許可されていない表現である可能性があります(※2)。こうした表現を見かけた場合、広告の信頼性を疑うことが重要です。

エビデンスの読み方:信頼性の階層

研究のエビデンスには以下のような信頼性の階層があります(※3)。

エビデンスの強さ研究デザイン
最も強いシステマティックレビュー・メタアナリシス
強いランダム化比較試験(RCT)
中程度コホート研究・ケースコントロール研究
弱い症例報告・専門家意見・動物実験
注意が必要メーカー自社研究・広告の推薦文

広告で「研究で証明」とあっても、どのレベルの研究かを確認することが重要です。

男性向けサプリでよく見る成分の整理

以下はよく宣伝される成分の一般的な整理です(個人への適用は医師・薬剤師に相談を)。

亜鉛:テストステロン産生に関与するミネラルであり、欠乏状態での補充には意義があるとする報告があります(※4)。ただし欠乏でない場合の過剰摂取は有害となりえます。

マカ:性機能・活力への効果を示すいくつかの小規模研究があります(※5)が、エビデンスはまだ限定的です。

DHEA(デヒドロエピアンドロステロン):一部の国でサプリとして販売されていますが、日本では医薬品扱いとなっており、一般のサプリとしての販売は認められていません(※2)。

高麗人参(紅参):疲労感・活力への効果を示す研究がある一方、血圧・凝固系への影響など注意点もあります(※6)。

漢方薬の位置づけと注意点

漢方薬は日本では医薬品として処方・販売されるものもあり、科学的な研究が進んでいる成分もあります。一方で(※1):

  • 生薬同士・西洋薬との相互作用がある(例:甘草含有製剤と降圧薬)
  • 「証(体質・状態への適合性)」に基づく選択が必要で、自己判断での選択では効果が出にくい場合がある
  • 長期使用による副作用(低カリウム血症など)の報告がある

漢方薬を使う場合も、できれば漢方の専門家・医師に相談した上で選ぶことをお勧めします。

情報選択のチェックリスト

以下の点を確認することで、情報の信頼性を評価する助けになります。

  • 「必ず効く」「誰でも改善」などの断定的表現がないか
  • 発表している機関・著者が明示されているか
  • 研究のデザインと対象人数が書かれているか
  • 利益相反(資金源・メーカーとの関係)が開示されているか
  • 副作用・注意点の記載があるか

今日から試せる行動

  • 現在飲んでいるサプリの成分と量を書き出して、かかりつけ医に見せる
  • 新しいサプリを始める前に「他の薬との相互作用はないか」を薬剤師に確認する
  • 広告に「研究で証明」とある場合、その研究がどこで発表されたものかを調べてみる

受診・紹介の目安

以下の場合は受診・相談が必要です。

  • 赤旗症状:サプリ・漢方を始めた後に体調が悪化した・アレルギー反応が出た(→ 速やかに服用中止して受診)
  • 複数のサプリ・処方薬を同時に使用しており、整理できていない
  • 「サプリで症状が改善するはずなのに続けても変わらない」——根本的な診断・治療が必要な可能性
  • 高額なサプリへの依存で経済的・精神的負担になっている

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の製品の推奨または否定を行うものではありません。個別の製品・成分の適否については、医師・薬剤師にご相談ください。


参考文献

国内文献

※1 日本東洋医学会「漢方治療の副作用と注意点」
※2 消費者庁「機能性表示食品について」および厚生労働省「薬機法の概要」(最新版参照)

国際文献

※3 Guyatt GH, et al. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ. 2008;336(7650):924-926.
※4 Prasad AS, et al. Zinc status and serum testosterone levels of healthy adults. Nutrition. 1996;12(5):344-348.
※5 Gonzales GF, et al. Effect of Lepidium meyenii (Maca) on sexual desire and its absent relationship with serum testosterone levels in adult healthy men. Andrologia. 2002;34(6):367-372.
※6 Kim HG, et al. Antifatigue effects of Panax ginseng C.A. Meyer: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. PLoS One. 2013;8(4):e61271.