男性の更年期 #31

男性の甲状腺の乱れ——LOH症候群と似た症状に注意


結論(先に)

倦怠感・意欲低下・性欲低下は、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)と甲状腺機能異常の両方で起こりえます。甲状腺の問題は血液検査1本で確認できるため、「更年期かも」と思う前に一度確認することが重要です。自己判断での服薬変更は避け、気になる症状が続く場合は医療機関を受診してください。


読者の状況

  • 「歳のせいかと思っていたが、どうも体調が回復しない」
  • 「疲れ・むくみ・寒がりが続いている」
  • 「性欲や活力が落ちたが、病院に行くほどでもないと思っていた」
  • 「男性の甲状腺の病気という話を聞いたことがない」
  • 「LOHの記事を読んで、甲状腺との違いが気になった」

よくある誤解

誤解実際
甲状腺の病気は女性特有のもの男性にも起こる。頻度は女性より低いが見逃されやすい
疲れ・意欲低下はすべてLOHが原因甲状腺機能低下症・うつ病・糖尿病なども同様の症状を呈する
甲状腺の異常は体重変化がなければ心配不要体重変化がなくても倦怠感・寒がり・むくみだけで発症する例がある
サプリで甲状腺機能を自分で整えられる医師の診断・管理なしに自己対応するのはリスクがある

根拠に基づく一般向け整理

甲状腺とは

甲状腺は首の前にある蝶形の臓器で、代謝・体温調節・エネルギー産生などに関わるホルモンを分泌します(※1)。このホルモンのバランスが崩れると、全身にわたる症状が出やすくなります。

甲状腺機能低下症(橋本病など)の症状

甲状腺ホルモンが不足する状態では、以下のような症状が報告されています(※2)。

  • 倦怠感・疲れやすさ
  • 体重増加・むくみ
  • 寒がり・低体温傾向
  • 便秘
  • 気分の落ち込み・意欲低下
  • 脈が遅い(徐脈)
  • 筋肉痛・関節の違和感

これらは LOH症候群(→ #1)と重なる部分が多く、鑑別が必要です(※3)。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)の症状

一方、甲状腺ホルモンが過剰な場合は、以下のような症状が起きることがあります(※2)。

  • 動悸・息切れ
  • 体重減少・発汗過多
  • 暑がり・手の震え
  • 下痢傾向
  • 興奮・不安感・睡眠障害(→ sleep #1 参照)
  • 眼球突出(バセドウ病の特徴的な所見)

男性における甲状腺疾患の特徴

甲状腺疾患全体では女性の発症が多いですが、男性でも発症します(※4)。男性では症状が目立ちにくく、「加齢のせい」「仕事の疲れ」として見過ごされやすい点が指摘されています(※5)。

診断は血液検査(TSH・FT3・FT4など)で比較的簡単に確認できます。LOH症候群の評価と合わせて甲状腺機能を確認することは、鑑別診断の基本的なステップとされています(※3)。

テストステロンと甲状腺の相互関係

甲状腺機能低下が続くと、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の変動を通じてテストステロンの利用効率に影響を与える可能性があるとの報告があります(※6)。LOH症候群の評価においても甲状腺機能の確認は重要な手順の一つです。


今日から試せる行動

  • かかりつけ医に「甲状腺の血液検査もお願いできますか」と一言伝える
  • 倦怠感・むくみ・寒がりが続く場合は症状のメモを作って受診時に持参する
  • 市販の甲状腺関連サプリは医師への相談前には開始しない

受診・紹介の目安

以下に該当する場合は速やかに内科・内分泌内科・耳鼻咽喉科(甲状腺専門)を受診してください。

  • 赤旗症状:強い動悸・息切れ・手の震え(亢進症の可能性)
  • 赤旗症状:高度なむくみ・意識がもうろうとする・体温が異常に低い(低下症の重症化)
  • 首の前にしこり・腫れを自覚する
  • 倦怠感・意欲低下が数週間以上続き、生活への支障がある
  • 甲状腺ホルモン製剤をすでに服用中で症状が悪化している(自己中止はせず受診)

LOH症候群が疑われる場合も、甲状腺機能の確認を同時に行うことを推奨します(→ #7)。


免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療の代替ではありません。症状が続く場合や不安がある場合は、医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

※1 日本甲状腺学会「甲状腺疾患診断ガイドライン」(最新版参照)
※2 日本甲状腺学会「甲状腺機能低下症・亢進症の症状一覧」
※4 日本甲状腺学会「甲状腺疾患の疫学データ」

国際文献

※3 Dandona P, Rosenberg MT. A practical guide to male hypogonadism in the primary care setting. Int J Clin Pract. 2010;64(6):682-696.
※5 Hollowell JG, et al. Serum TSH, T4, and thyroid antibodies in the United States population (NHANES III). J Clin Endocrinol Metab. 2002;87(2):489-499.
※6 Tahboub R, Arafah BM. Sex steroids and the thyroid. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2009;23(6):769-780.