男性の更年期 #21

腹まわり・メタボと「だるさ」の話


結論(先に)

メタボリックシンドローム(腹囲の増加・高血圧・高血糖・脂質異常の組み合わせ)と「だるさ」は、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)と双方向に絡み合っている可能性があります。「太ったせいで疲れやすい」と「ホルモンが下がって太りやすくなった」は、どちらかだけでなく同時に起きている場合があります。生活習慣の改善と、必要に応じた医療的評価の両面が重要です。


読者の状況

  • お腹まわりが増えてきて、健診でメタボを指摘されたことがある
  • 「だるい・疲れやすい」と同時に体重管理がうまくいかない状態が続いている
  • 食事や運動を試みたが続かず、どこか身体的な問題があるのではと思っている
  • LOH症候群(→ #1)を調べていて、メタボとの関係が気になった
  • 生活習慣病(糖尿病・高血圧)の治療を受けているが、疲れ・気力の問題は別に相談したい

よくある誤解

誤解実際
太っているのは意志が弱いからだホルモン変化・睡眠障害・慢性疲労が体重管理を難しくする場合がある
メタボと更年期は別の問題LOH症候群とメタボリックシンドロームは互いに悪化させ合う可能性がある(※1)
「だるさ」は体重が減れば自然に解消する体重が減っても、LOH症候群や睡眠障害が残ると疲労感が続く場合がある

根拠に基づく一般向け整理

LOH症候群とメタボリックシンドロームの悪循環

テストステロン(Testosterone)は体脂肪(特に内臓脂肪)の蓄積を抑制し、筋肉量の維持に関与するホルモンです(※2)。テストステロンが低下すると内臓脂肪が増えやすくなり、逆に内臓脂肪の増加がテストステロンをさらに低下させる悪循環が生じる可能性が指摘されています(※1)。

この悪循環には以下のメカニズムが関与しているとされます(※2)。

  • 内臓脂肪細胞がテストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)に変換する酵素(アロマターゼ)を多く含む
  • インスリン抵抗性の悪化がLH(黄体形成ホルモン)の分泌を妨げ、テストステロン産生を低下させる

「だるさ」との接点

メタボリックシンドロームに伴う慢性炎症・インスリン抵抗性・睡眠の質の低下は、疲労感・気力低下を引き起こす可能性があります(※3)。また、LOH症候群による活力低下が運動不足を招き、さらにメタボが悪化するという流れも考えられます。

生活習慣改善の優先順位

「何から手をつけるか」という問いに対し、一般的には以下の順序が現実的とされます。

  1. 睡眠の改善:睡眠不足が食欲増進・インスリン抵抗性・テストステロン低下に影響するため優先度が高い(→ #8)
  2. 運動習慣の再構築:内臓脂肪減少に最も有効で、テストステロン分泌にも好影響の可能性(→ #22)
  3. 食事の見直し:極端な制限より「腹八分・食物繊維・タンパク質確保」から
  4. アルコール・喫煙の見直し:テストステロン低下・睡眠悪化・内臓脂肪増加に関与

内科との連携

糖尿病・高血圧・脂質異常症を既に治療中の方は、「だるさ・活力の変化」を内科・かかりつけ医にも伝えてください。血糖コントロールの改善がLOH症候群類似症状を改善する場合があり、また逆にLOH症候群の治療が代謝指標の改善につながる可能性も報告されています(※4)。どちらか一方だけを治療するより、両面の評価が有益です。


今日から試せる行動

  • 毎朝体重と腹囲を記録する(変化を可視化するだけで行動が変わりやすい)
  • 食後30分のウォーキングを試す(内臓脂肪減少に有効とされる)(→ #22)
  • 睡眠時間を1時間増やす・睡眠の質を確認する(→ #8)
  • 健診で「メタボ」「血糖が高め」を指摘されている場合は、「疲れ・活力」もセットで医師に相談する

受診・紹介の目安

  • 健診でメタボの基準に該当しているが未治療(内科・生活習慣病外来への受診)
  • 血糖・血圧の数値が高く、だるさも続いている(内科での総合評価)
  • 体重減少の試みが全くうまくいかない(甲状腺疾患・LOH症候群など内分泌的原因の除外)
  • LOH症候群の症状(→ #1)とメタボが重なっている(Men’s Health外来・泌尿器科との連携)

受診先の目安:内科(かかりつけ・生活習慣病外来)、糖尿病・内分泌内科、Men’s Health外来・泌尿器科


免責

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。生活習慣病・ホルモン異常が疑われる場合は医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

  • ※1:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
  • ※2:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
  • ※3:厚生労働省「メタボリックシンドローム・特定健診に関する情報」

国際文献

  • ※4:Grossmann M. “Low testosterone in men with type 2 diabetes: significance and treatment.” J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(8):2341–2353.
  • ※5:Corona G, et al. “Testosterone and metabolic syndrome: a meta-analysis study.” J Sex Med. 2011;8(1):272–283.