男性の更年期 #19

男性のホルモン・健康管理——50代以降も「測る習慣」を持つ


結論(先に)

50代以降の男性にとって、毎年の採血による「ホルモン管理」は、健康診断と並ぶ予防医療の柱になりうるものです。テストステロン・PSA・代謝マーカー(血糖・脂質・肝機能)を定期的に測定することで、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)や生活習慣病の早期発見・早期対応が可能になります。「症状が出てから受診する」から「定期的に測って予防する」への意識の転換が、長期的な健康維持につながります。


読者の状況

  • 50代以降の男性で、健康管理に関心はあるが何をすればいいかわからない
  • 毎年の健康診断は受けているが、LOH症候群の検査は含まれていないと知った
  • テストステロンという言葉は聞いたことがあるが、自分に関係あるか疑問
  • 「症状が出るまでは病院に行かない」という考え方をしてきた
  • 家族(妻・子ども)から「もっと健康に気をつけてほしい」と言われている

よくある誤解

誤解実際
健康診断で問題がなければホルモン検査は不要通常の健康診断にテストステロン・PSA測定は含まれていないことが多い
症状がなければ測る必要はない無症状でもテストステロン低下が進行していることがあり、早期に把握することで対応の選択肢が広がる
測るだけで何も変わらない測定値が基準値からどの方向に動いているかを知ることで、生活習慣改善・治療開始の判断材料になる
PSA検査は前立腺がんの人だけが必要50代以降の男性全般に、スクリーニングとして考慮される場合がある(医師と相談)

根拠に基づく一般向け整理

50代以降の男性ホルモン変化

テストステロンは30代後半から年間約1〜2%の割合で低下し、50代では若年期の70〜80%程度になる場合があります(※1)。ただし個人差が大きく、60代でも若年期と同程度の値を保つ方もいれば、40代で低値を示す方もいます。定期的に「自分の値の推移」を把握することが重要です。

定期的に確認を考えたい検査項目

以下は、50代以降の男性に一般的に推奨される検査の目安です(※1、※2)。具体的な頻度・項目は医師と相談して決定します。

テストステロン(総テストステロン・遊離テストステロン)

  • LOH症候群の評価に必須
  • 採血時刻(午前中が望ましい)・コンディションによって変動するため、同条件での比較が重要
  • 年1回の測定が目安

PSA(前立腺特異抗原)

  • 前立腺がん・前立腺肥大症のスクリーニングとして考慮される
  • 50歳以上(前立腺がんの家族歴があれば40代から)の男性に推奨される場合がある(※2)
  • TRT施行中は特に重要(→ #17)

代謝マーカー

  • 血糖(HbA1c)・脂質(LDL・HDL・中性脂肪)・肝機能(AST・ALT・γGTP)
  • テストステロン低下とメタボリックシンドロームの関係から、両者を同時に管理することが有益(→ #20)

LH・FSH

  • テストステロン低値の際、原因が精巣側か下垂体側かを評価するために測定
  • 主に初回評価や治療前後に確認

「健康診断+ホルモン管理」の考え方

日本の職域健康診断・市区町村の健康診断には、テストステロン・PSA測定は通常含まれていません。これを補う方法として以下が考えられます。

  • かかりつけ医への相談:「テストステロンとPSAも一緒に測ってほしい」と依頼する
  • Men’s Health外来・泌尿器科の受診:ホルモン管理を専門とする外来を活用する
  • オンライン診療の活用:定期的な採血結果の共有・相談が可能な場合がある

数値の「推移」を見ることの重要性

1回の測定値だけでなく、年ごとの推移を記録することで、「徐々に低下している」「改善している」という変化をとらえることができます。推移を見ることで、生活習慣の改善効果や治療の効果を客観的に確認できます(→ #18)。


今日から試せる行動

  • 直近の健康診断の結果を見直し、テストステロン・PSAの記載がないか確認する
  • かかりつけ医の次回受診時に「男性ホルモンとPSAも測りたい」と伝えてみる
  • AMSスコアを記入し、自分の症状の全体像を把握する(→ #2)
  • 採血結果を年ごとにファイルして「自分のトレンド」を記録する習慣を始める

受診・紹介の目安

以下の場合は、早めに医療機関への相談をお勧めします。

  • テストステロン低値・PSA高値を指摘されたことがある(専門医による評価が必要)
  • 倦怠感・気力低下・睡眠の変化が続いている(LOH症候群の評価を検討)
  • メタボリックシンドロームや生活習慣病がある(テストステロンと代謝の両面管理)
  • 前立腺がんの家族歴がある(PSAスクリーニング開始のタイミングを相談)
  • TRTを行っているが定期受診をしていない(安全管理のために受診再開が必要:→ #34)

受診先の目安:内科(かかりつけ・生活習慣病管理)、泌尿器科・Men’s Health外来


免責

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。検査の必要性・頻度は医師と相談して決定してください。


参考文献

国内文献

  • ※1:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
  • ※2:日本泌尿器科学会「前立腺がん検診ガイドライン(2023年版)」

国際文献

  • ※3:Lunenfeld B, et al. “Recommendations on the diagnosis, treatment and monitoring of hypogonadism in men.” Aging Male. 2021;24(1):1–34.
  • ※4:Bhasin S, et al. “Testosterone Therapy in Men with Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.” J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715–1744.
  • ※5:Wu FC, et al. “Identification of Late-Onset Hypogonadism in Middle-Aged and Elderly Men.” N Engl J Med. 2010;363(2):123–135.