男性の更年期 #9
夜中に何度も起きる——泌尿器と睡眠の両面
結論(先に)
夜中に1〜2回以上トイレに起きる「夜間頻尿」は、前立腺肥大症・過活動膀胱・LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)・睡眠時無呼吸症候群・心疾患など多様な原因が絡み合っている場合があります。「歳のせい」と放置せず、原因に応じた対処が可能です。泌尿器科と睡眠の両面から評価を受けることをお勧めします。
読者の状況
- 夜中に2〜3回以上目が覚めてトイレに行っており、睡眠が分断されている
- 朝の疲れが取れず、日中の集中力や活力が落ちている
- 「前立腺が悪いのかな」と思っているが、受診をためらっている
- 夜間頻尿以外にも、日中の尿漏れ・残尿感・尿線が細いなどの症状がある
- 睡眠薬を飲んでいても夜中にトイレで目が覚める
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 夜間頻尿は前立腺の問題だけ | 睡眠・心臓・ホルモン・膀胱など多様な原因がある(鑑別が重要) |
| 夜間頻尿は歳のせいで治らない | 原因によっては薬物療法・行動療法・生活習慣改善で改善できる場合がある |
| 1回くらいなら問題ない | 睡眠への影響と生活の質(QOL)を基準に評価する |
根拠に基づく一般向け整理
「夜間頻尿」の定義と頻度
就寝後に1回以上トイレに起きることを夜間頻尿と定義し、2回以上の場合にQOLへの影響が大きくなると報告されています(※1)。日本では60代男性の約3〜4割が夜間頻尿を経験しているとされています(※1)。
主な原因の分類
夜間頻尿の原因は大きく3つに分けられます(※2)。
1. 尿産生が多い(夜間多尿)
- 心不全・腎臓病・飲水過多・睡眠時無呼吸症候群による夜間利尿増加
- 抗利尿ホルモン(ADH)の低下(加齢性変化として起こりやすい)
2. 膀胱・前立腺の問題(膀胱蓄尿能の低下)
- 前立腺肥大症(BPH:Benign Prostatic Hyperplasia)
- 過活動膀胱(OAB:Overactive Bladder)
- 前立腺炎・膀胱炎
3. 睡眠障害(眠りが浅く目が覚めやすい)
- 不眠症・睡眠時無呼吸症候群(→ #8)
- うつ病・不安障害に伴う睡眠障害(→ #4)
LOH症候群との接点
LOH症候群(テストステロン(Testosterone)低下)は、過活動膀胱や排尿機能に影響する可能性が指摘されています(※3)。また、睡眠時無呼吸症候群と夜間頻尿が同時に存在するケースも多く、どちらも未治療のまま放置されやすい傾向があります(※4)。
前立腺がんとの鑑別
夜間頻尿・排尿困難・尿線の変化は、前立腺がんの初期でも見られる場合があります。PSA(前立腺特異抗原)検査を含む評価を定期的に受けることが推奨されます(→ #39参照)。自己判断での「前立腺肥大だろう」という解釈は注意が必要です(※2)。
今日から試せる行動
- 3〜7日間「排尿日誌」をつける(時間・量・夜間回数を記録):受診時に役立つ
- 夕食後の水分量を減らし、就寝前2時間のカフェイン・アルコールを控える
- むくみがある場合は、夕方に軽い運動や着圧ソックスでむくみを減らす(夜間の利尿が減ることがある)
- 「夜間頻尿」「排尿の問題」「睡眠の問題」をセットで医師に伝える
受診・紹介の目安
- 夜間に2回以上起きる状態が1カ月以上続いている(泌尿器科への受診が目安)
- 血尿・強い痛み・残尿感が強い(早めに泌尿器科へ)
- いびきがひどい・日中に強い眠気がある(睡眠時無呼吸の評価:→ #7)
- PSA検査を5年以上受けていない50歳以上の男性(前立腺がんスクリーニングの検討)
- LOH症候群の症状と重なっている(Men’s Health外来での総合評価)
受診先の目安:泌尿器科、睡眠専門外来(夜間頻尿と不眠が重なる場合)、Men’s Health外来
免責
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の判断に代わるものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。
参考文献
国内文献
- ※1:日本排尿機能学会「夜間頻尿診療ガイドライン(第2版)」(2020年)
- ※2:日本泌尿器科学会「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2017年版)」
- ※3:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
国際文献
- ※4:Ancoli-Israel S, et al. “The association between obstructive sleep apnea and nocturia in older adults.” J Clin Sleep Med. 2011;7(2):123–127.
- ※5:Coyne KS, et al. “The burden of nocturia on health-related quality of life.” BJU Int. 2010;107(10):1502–1507.