男性の更年期 #7
「男性ホルモンが低い」検査結果をどう受け止めるか
結論(先に)
テストステロン(Testosterone)の血液検査で「低い」という結果が出ても、それだけで直ちに治療が必要とはなりません。数値の解釈は「いつ採血したか」「どの項目を測ったか」「どのような症状があるか」によって異なり、専門医による総合的な判断が必要です。この記事では、結果を受け取った後にどう考えるかの一般的な枠組みを整理します。
読者の状況
- 健診または医療機関でテストステロンが低いと指摘された
- 「どういう意味か」「どうすれば良いか」を医師に詳しく聞けなかった
- LOH症候群(→ #1)を調べていて、自分の検査値が気になっている
- 「補充療法を受けた方がいいか」を考え始めているが、情報が多くて判断できない
- 数値は低くないが症状があり、どう解釈すればよいか迷っている
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 数値が基準値を下回ったら治療が必要 | 症状・生活への影響・他の原因の除外などを含む総合判断が必要 |
| 一度の検査で確定できる | 複数回の測定と採血条件(午前・空腹など)の確認が推奨される(※1) |
| 低ければサプリや民間療法で上げればよい | 原因によっては別の疾患が背景にある可能性があり、医師の評価が先 |
根拠に基づく一般向け整理
「総テストステロン」と「遊離テストステロン」
テストステロン(Testosterone)の測定には主に2種類あります(※1)。
- 総テストステロン(Total Testosterone):タンパク質と結合したものを含む全量
- 遊離テストステロン(Free Testosterone):実際に細胞に作用できる割合
LOH症候群の診断では、総テストステロンと遊離テストステロンの両方を評価することが多く、どちらか一方だけでは不十分な場合があります。また、肥満・糖尿病・慢性肝疾患などで総テストステロンが低く出やすいことも知られています(※2)。
採血条件が結果に影響する
テストステロンは日内変動があり、一般的に午前8〜10時頃が最も高くなります(※1)。このため、午後に採血した値は過小評価される場合があります。LOH症候群の評価では午前中の採血が推奨されることが多く、異なる日に2回測定することが望ましいとされます(※3)。
「低い数値」の背景を確認する
テストステロン低下の原因は大きく2つに分けられます(※3)。
- 原発性(精巣側の問題):精巣での産生が低下
- 続発性(脳下垂体・視床下部の問題):信号を出す側の機能低下
また、ストレス・睡眠不足・肥満・アルコール多飲・ステロイド薬の使用なども一時的に数値を低下させることがあります。これらが改善されれば数値が戻る場合もあり、すぐに補充療法の対象とはなりません。
専門医の評価で何をするか
専門医(泌尿器科・Men’s Health外来)では一般的に以下を確認します(※3)。
- 症状の評価(AMSスコアなどのセルフチェック活用)
- 複数回の採血(測定条件を統一して)
- 下垂体ホルモン(LH・FSH)など他のホルモンの確認
- 前立腺(PSA)・血液(赤血球・ヘマトクリット)のベースライン評価
- 生活習慣の確認と改善指導
今日から試せる行動
- 受診時に「どの項目を・いつ・何回測ったか」を医師に確認する
- 今後の受診に向けて、症状・生活習慣・服薬中の薬をメモしておく
- 睡眠・肥満・ストレスなど生活面の見直しを先に始める(→ #22、→ #21)
- 補充療法の検討は、専門医の評価を受けてから(→ #16参照)
受診・紹介の目安
- 「低い」と言われたが次のステップが示されなかった(専門医への紹介を検討)
- 症状が複数あって日常生活に影響が出ている(→ #1)
- 前立腺がんの既往・家族歴がある(補充療法の適応外になる可能性があるため、必ず専門医に確認)
- 貧血・多血症の傾向がある(補充療法前のベースライン評価が必要)
受診先の目安:泌尿器科、Men’s Health外来、内科(かかりつけ)
免責
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の判断に代わるものではありません。テストステロン測定値の解釈は必ず医療機関で行ってください。
参考文献
国内文献
- ※1:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
- ※2:日本内分泌学会「性腺機能低下症の診断と治療に関するガイドライン」
国際文献
- ※3:Bhasin S, et al. “Testosterone Therapy in Men with Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.” J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715–1744.
- ※4:Morales A, et al. “Testosterone deficiency syndrome (TDS): needs, risks and benefits of testosterone treatment.” J Steroid Biochem Mol Biol. 2010;121(3-5):572–577.