男性の更年期 #5

「ED=加齢のせい」と思い込んでいませんか——LOHとEDの重なり


結論(先に)

ED(Erectile Dysfunction:勃起障害)は加齢だけが原因ではなく、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)・血管疾患・心理的要因などが複雑に絡み合っている可能性があります。「ED単独」「LOH単独」「両方が重なる」の3パターンで整理すると、受診のきっかけをつかみやすくなります。加齢を理由に諦める前に、一度専門医に相談することをお勧めします。


読者の状況

  • 40〜60代の男性でEDが気になり始めているが、「加齢のせい」と思って放置している
  • LOH症候群という言葉を聞いたが、EDとどう関係するのかわからない
  • 性機能の問題を医師に話すことに抵抗感がある
  • 倦怠感・気力低下など他の症状も重なっており、関連があるか気になる
  • パートナーへの影響を気にしているが、どこに相談すればいいかわからない

よくある誤解

誤解実際
EDは加齢による避けられない変化血管・神経・ホルモン・心理など複数の要因があり、治療で改善できる場合がある
EDがあれば必ずLOH症候群EDとLOH症候群は別の概念で、必ずしも一致しない。血液検査で確認が必要
性機能の問題は恥ずかしくて受診できない泌尿器科・Men’s Health外来はこうした相談を専門とする診療科
ED治療薬を飲めば解決するLOHが原因の場合はテストステロン評価も必要で、薬だけでは不十分なことがある(→ #16)

根拠に基づく一般向け整理

EDの原因は多様

EDは単一の原因ではなく、以下のような要因が重なって生じることがあります(※1)。

  • 血管性:動脈硬化・高血圧・糖尿病による血流障害(EDと心血管疾患はリスクを共有する場合がある)
  • 神経性:脊髄疾患・骨盤内手術後など
  • 内分泌性:テストステロン低下(LOH症候群)・甲状腺疾患
  • 心理性:不安・うつ・パフォーマンス不安
  • 薬剤性:一部の降圧薬・抗うつ薬など

LOHとEDの3パターン

パターン①:ED単独(テストステロンは正常範囲) 血管・心理・薬剤などが主な要因で、テストステロンは正常範囲内。ED治療薬(PDE5阻害薬)の適応が主体(※2)。

パターン②:LOH単独(EDは目立たない) テストステロン低下による倦怠感・気力低下・気分の落ち込みが主で、ED症状は軽微。AMSスコアで他の症状が目立つ(→ #2)。

パターン③:EDとLOHが重なる テストステロン低下が性欲・勃起機能の両方に影響している状態の可能性があります(※3)。この場合、テストステロンの評価と治療(→ #16)がED改善に寄与することがあるとされています。どちらが主かは血液検査と問診で判断します。

血管性EDと心血管リスクの関係

EDを発症した男性では、後から心血管疾患が見つかるケースがあるという報告があります(※4)。これは両者が動脈硬化という共通の病態を背景とするためと考えられており、EDは「血管のサイン」として捉えることも重要です。「EDがあったら心臓も調べる」という視点を医師は持っています。

テストステロンと性機能の関係

テストステロンは性欲(リビドー)の維持に重要であり、低下すると性욕の減退が生じる可能性があります(※3)。一方、テストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)によるED改善のエビデンスは、テストステロンが明らかに低値である場合に限られます。正常範囲であれば、TRTよりも他のアプローチが優先されます(※3)(→ #16)。


今日から試せる行動

  • AMSスコアを記入し、性機能症状の項目だけでなく心理・身体症状も確認する(→ #2)
  • 「EDのみが気になるのか」「倦怠感・気力低下も重なるのか」を自分で整理してみる
  • 泌尿器科またはMen’s Health外来への受診を検討する(問診票に性機能の項目がある)
  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症など血管リスクがあれば、内科での管理も並行する

受診・紹介の目安

以下の場合は、早めに医療機関への相談をお勧めします。

  • EDが3か月以上続いている(一過性のものでなければ評価が有用)
  • 性欲の低下が倦怠感・気力低下・気分の落ち込みとともにある(LOHの可能性:→ #1)
  • 高血圧・糖尿病・喫煙などのリスクがある(血管性EDの評価)
  • 胸痛・動悸・息切れがある(循環器科への受診を優先)
  • ED治療薬を自己判断で服用している(適応・禁忌の確認が必要)

受診先の目安:泌尿器科、Men’s Health外来、内科(血管リスク管理)


免責

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

  • ※1:日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン(第3版)」
  • ※2:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」

国際文献

  • ※3:Isidori AM, et al. “Effects of testosterone on sexual function in men: results of a meta-analysis.” Clin Endocrinol (Oxf). 2005;63(4):381–394.
  • ※4:Vlachopoulos CV, et al. “Erectile dysfunction in the cardiovascular patient.” Eur Heart J. 2013;34(27):2034–2046.
  • ※5:Bhasin S, et al. “Testosterone Therapy in Men with Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.” J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715–1744.