男性の更年期 #4
慢性的な疲れ、うつとの見分け(一般論)
結論(先に)
慢性的な疲れ・気力の低下・意欲の減退は、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)でも、うつ病・適応障害でも生じる可能性があります。両者は重なって存在することもあり、自己判断での「どちらか」の決定は難しい状態です。特に「気分の落ち込みが2週間以上続く」「何もかも楽しめない」という症状がある場合は、精神科・心療内科への相談を強くお勧めします。
読者の状況
- 「疲れているのか、気分が落ちているのか、自分でもよくわからない」
- 「うつ病と言われるほどではないと思っているが、気になっている」
- 仕事や家庭でのストレスが続いており、体調と気分の両方が落ちている
- 「男性更年期かもしれない」と思い調べていたら、うつとの類似を知った
- 以前から通院しているが、「疲れ」の原因について納得のいく説明を受けていない
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| うつ病は「悲しい気持ち」が主な症状 | 男性うつは「イライラ・疲労・身体症状」として現れることが多い(※1) |
| LOH症候群とうつ病は別物で重ならない | 同時に存在することがあり、どちらかだけを治療すれば十分とは限らない(※2) |
| 「気力がない」は意志の問題 | 脳内の神経伝達物質やホルモンバランスの変化が関与している可能性がある |
| 精神科は重症者だけが行くところ | 軽症から中等症の段階での相談が回復を早める場合がある |
根拠に基づく一般向け整理
LOH症候群とうつ病の症状の重なり
LOH症候群とうつ病はどちらも「疲労感」「意欲の低下」「集中力の低下」「睡眠障害」を症状として持ちます(※2、※3)。このため、専門医でも問診・血液検査・精神症状評価を組み合わせて判断します。
「うつ病寄り」のサイン
以下の症状が目立つ場合は、うつ病・適応障害の可能性が高くなります(※1)。
- ほぼ毎日、一日中続く気分の落ち込み・空虚感(2週間以上)
- これまで楽しかったことへの興味・喜びの消失
- 自分を責める気持ち・無価値感・死にたいという気持ち
- 食欲・体重の顕著な変化(増加または減少)
- 会話や動作が明らかに遅くなった、または落ち着かない
「LOH症候群寄り」のサイン
以下が中心で、気分の落ち込みが前面でない場合はLOH症候群の評価も検討されます(※4)。
- 性欲・ED(Erectile Dysfunction:勃起障害)の変化が先行している
- 筋力低下・骨密度の変化・体脂肪の増加を感じる
- 40代以降の緩やかな変化で、明確なストレス要因がない
同時に存在する場合
LOH症候群とうつ病は互いに影響し合う可能性があります(※2)。テストステロン(Testosterone)低下が気分に影響し、うつ状態がさらにテストステロン低下を促す悪循環が指摘されています。このため、一方だけを治療しても改善が不十分な場合があります。
今日から試せる行動
- 「気分の落ち込みが2週間以上続いているか」を確認する(Yes なら精神科・心療内科へ)
- 「死にたい気持ち・消えたい気持ち」がある場合は、今すぐ相談窓口(いのちの電話など)または医療機関へ
- 症状の始まりと、ストレスになった出来事の時期を照合してメモする
- 受診前に「精神症状と身体症状の両方を話したい」と伝える準備をする
受診・紹介の目安
以下は早急に精神科・心療内科を受診する目安です。
- 「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちがある(緊急:今日受診・相談窓口に電話)
- 気分の落ち込み・楽しめない状態が2週間以上続く
- 仕事・家事・日常生活が困難になっている
- 眠れない・食べられない状態が1週間以上続く
LOH症候群の評価も同時に必要と感じる場合は、泌尿器科・Men’s Health外来への紹介も検討されます(→ #1、→ #7)。
相談窓口:よりそいホットライン(0120-279-338)、いのちの電話(0120-783-556)
免責
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。精神症状が心配な場合は、速やかに精神科・心療内科を受診してください。
参考文献
国内文献
- ※1:日本うつ病学会「うつ病治療ガイドライン(2023年版)」
- ※2:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
- ※3:厚生労働省こころの健康サイト「うつ病の症状と治療」
国際文献
- ※4:Bhasin S, et al. “Testosterone Therapy in Men with Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.” J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715–1744.
- ※5:Zarrouf FA, et al. “Testosterone and depression: systematic review and meta-analysis.” J Psychiatr Pract. 2009;15(4):289–305.