男性の更年期 #3

加齢と活力低下:気のせいと切り分ける目安


結論(先に)

「疲れやすくなった」「気力が続かない」は加齢でも起こりますが、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)・うつ病・甲状腺疾患・睡眠障害など、対処できる疾患が背景にある可能性があります。「気のせい」と切り捨てず、症状のパターンと持続期間を把握することが、受診を考えるうえでの第一歩です。


読者の状況

  • 「以前より疲れやすい」「やる気が出にくい」と感じているが、病名は何もついていない
  • 生活が特に変わったわけではないのに体調が落ちた気がする
  • 「歳のせいだから仕方ない」と言い聞かせているが、どこまで受け入れるべきか迷っている
  • 健診の数値は大きく外れていないのに、体感が悪い
  • 家族から「最近元気がない」と言われて気になり始めた

よくある誤解

誤解実際
疲れは加齢の宿命で医療は関係ない治療可能な疾患が背景にある場合があり、放置より評価が有益なことも多い
健診が正常ならホルモンも問題ない一般健診にテストステロン(Testosterone)測定は含まれないことが多い
「気力がない」=怠け身体・精神疾患のサインである場合があり、自己批判より受診が先決

根拠に基づく一般向け整理

加齢による変化と「症状」の違い

加齢とともに最大筋力・持久力・回復力が緩やかに低下することは生理的変化として知られています(※1)。一方、LOH症候群に関連する活力低下は「緩やかな生理的変化」と重なりつつも、テストステロン(Testosterone)の低下が関与し、症状の程度が日常生活に影響を与える水準に達している状態を指します(※2)。

「切り分け」に役立つ視点

以下のポイントで状態を整理すると、受診の必要性を判断しやすくなります(※3)。

1. 持続期間 数日の疲れは睡眠不足やストレスで説明できることが多い。3カ月以上続く場合は何らかの評価を検討する目安です。

2. 複数症状の重なり 疲労だけでなく「気分の落ち込み」「睡眠の変化」「性機能の変化」が重なる場合は、LOH症候群または精神疾患の可能性が上がります(→ #1、→ #4)。

3. 生活習慣の変化 運動量の低下・体重増加・飲酒量の増加などが先行していた場合は、生活習慣の改善から始めることが有益な場合があります(→ #22、→ #21)。

4. 甲状腺・貧血などの除外 「体全体がだるい」「寒がりになった」「脈が遅い」などが加わる場合は甲状腺機能低下症の可能性もあり、一般血液検査で確認できます(※4)。

若い世代(30〜40代前半)の活力低下

テストステロンの加齢性低下は通常40代以降に顕著になりますが、慢性ストレス・肥満・睡眠不足・アルコール多飲は若い世代でもテストステロン低下に関与する可能性が指摘されています(※5)。「若いから大丈夫」とは言い切れない理由の一つです。


今日から試せる行動

  • 症状のパターンを「いつから・どんな場面で・どの程度か」で1週間記録する
  • 睡眠の質(入眠・中途覚醒・朝の爽快感)を同時に確認する(→ #8)
  • 「疲れ以外に気になることはないか」を自問し、複数症状があれば受診の候補に加える
  • かかりつけ医に甲状腺・貧血の確認を含めた相談をする

受診・紹介の目安

  • 3カ月以上続く強い疲労・気力低下(原因の評価が必要)
  • 気分の落ち込みが2週間以上(うつ病の可能性:→ #3)
  • 体重の急激な変化・寒がり・動悸(内分泌疾患の除外)
  • 日常生活・仕事・人間関係への影響が出ている

受診先の目安:内科(かかりつけ)、泌尿器科、Men’s Health外来、心療内科


免責

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

  • ※1:厚生労働省「健康日本21(第三次)」身体機能・筋力に関するデータ
  • ※2:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
  • ※3:日本内科学会「疲労・倦怠感に関する診療ガイダンス」

国際文献

  • ※4:Jonklaas J, et al. “Guidelines for the Treatment of Hypothyroidism.” Thyroid. 2014;24(12):1670–1751.
  • ※5:Grossmann M. “Low testosterone in men with type 2 diabetes: significance and treatment.” J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(8):2341–2353.