男性にも「更年期」はあるのか——LOH症候群を知る
結論(先に)
男性にも、加齢にともなうホルモン変化から生じる「LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)」と呼ばれる状態が存在する可能性があります。「男性更年期」という言葉はまだ一般になじみが薄いですが、疲れ・気力低下・睡眠変化などの症状が重なるときは、自己診断で放置せず、医師に相談することが出発点です。この記事では、概念の枠組みと受診を考えるヒントを一般向けに整理します。
読者の状況
- 40〜60代の男性で「最近、疲れが抜けにくい」「気力が続かない」と感じている
- 「男性にも更年期がある」と聞いたことはあるが、どういう状態かよくわからない
- 病院へ行くほどかどうか判断できず、相談先に迷っている
- 「気のせいだろう」「仕事のストレスだろう」と思いながらも気になっている
- 家族やパートナーの変化を気にかけているが、どう声をかけるか迷っている
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 男性に更年期はない | 加齢にともなうテストステロン低下による症状がある可能性がある(LOH症候群) |
| 「だるい」だけなら放置でよい | 甲状腺疾患・うつ病など他の疾患が隠れている場合があり、鑑別が重要(→ #4) |
| 血液検査で「低い」=すぐ治療 | 数値だけでなく症状との総合判断が必要で、専門医による評価が前提(→ #7) |
| 自然に回復する | 症状の背景はさまざまで、放置より早期の相談が有益な場合がある |
根拠に基づく一般向け整理
LOH症候群とは
LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism:加齢男性性腺機能低下症候群)は、加齢にともないテストステロン(Testosterone:男性ホルモン)の分泌が低下することで生じるとされる症状の総称です(※1)。日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会のガイドラインでは、症状と血中テストステロン値の両面から診断を検討するとされています(※2)。
症状の特徴
主な症状として、以下が報告されています(※1、※2)。
- 身体症状:疲労感・筋力低下・ほてり・発汗
- 精神症状:気分の落ち込み・集中力低下・不眠・不安感
- 性機能症状:性欲の変化・ED(Erectile Dysfunction:勃起障害)
ただし、これらの症状は他の疾患(うつ病・甲状腺機能低下症・睡眠時無呼吸症候群など)と重なることが多く、LOH症候群だけが原因とは限りません(※3)。
「更年期」という言葉について
女性の更年期は閉経という明確な変化点があるのに対し、男性のテストステロン低下は緩やかで個人差が大きいとされています(※1)。このため「LOH症候群」という呼称が医学的には使われますが、一般的に「男性更年期」と呼ばれることもあります。どちらの言葉も、概念を知る入口として使って構いません。
誰に多いか
30代後半から徐々にテストステロンが低下する傾向があり、40〜60代で症状を感じる方が多いとされます(※2)。ただし若い世代でも生活習慣・ストレス・肥満などが関与する場合があります(→ #3)。
今日から試せる行動
- 「疲れ・気力・睡眠」の変化を1週間だけメモしてみる(受診時の説明が具体的になる)
- AMSスコア(男性更年期症状チェックリスト)で症状を整理する(→ #2)
- かかりつけ医に「最近疲れやすいのだが、ホルモンのことも含めて相談したい」と切り出してみる
- 睡眠・運動・食生活の基本的な見直しを同時に行う(→ #22、→ #21)
受診・紹介の目安
以下に当てはまる場合は、早めに医療機関への相談をお勧めします。
- 気分の落ち込みが2週間以上続く(うつ病との鑑別が必要:→ #3)
- 強い倦怠感・体重変化・寒がり(甲状腺疾患の可能性)
- 夜間頻尿が増えた・排尿困難がある(泌尿器科的評価が必要:→ #8)
- 胸痛・動悸・強いほてり(循環器・内分泌疾患を除外)
- 日常生活や仕事に支障が出ている(受診を迷う理由はありません)
受診先の目安:泌尿器科、Men’s Health外来、内科(かかりつけ)、心療内科(精神症状が前面の場合)
免責
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針の決定に代わるものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。
参考文献
国内文献
- ※1:日本泌尿器科学会・日本Men’s Health医学会「LOH症候群診療ガイドライン(2022年版)」
- ※2:日本Men’s Health医学会「男性更年期障害(LOH症候群)に関する啓発資料」
- ※3:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査(男性版参考)」
国際文献
- ※4:Bhasin S, et al. “Testosterone Therapy in Men with Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline.” J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715–1744.
- ※5:Lunenfeld B, et al. “Recommendations on the diagnosis, treatment and monitoring of hypogonadism in men.” Aging Male. 2021;24(1):1–34.