女性の更年期 #33

閉経後の膣乾燥・性交痛・頻尿——GSMという概念を知っておく


結論(先に)

閉経後に現れる膣乾燥感・性交痛・尿失禁・頻尿・繰り返す膀胱炎は、GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)と呼ばれる一群の症状です。「年のせい」「仕方ない」と思われがちですが、適切な治療で改善する可能性があります。オンラインでも相談しやすい症状の一つです。


読者の状況

  • 閉経後から膣の乾燥感や性交時の不快感が出てきたが、誰にも言えずにいる
  • 尿漏れや頻尿が増えたが、泌尿器科に行くべきか婦人科に行くべきかわからない
  • 繰り返す膀胱炎(抗生剤を使っても再発する)に悩んでいる
  • 「更年期のほてり」はおさまったが、別の不快感が続いている
  • HRTは怖いが、「局所的な治療」なら検討できるかもと感じている(→ #32)

よくある誤解

誤解実際
膣の乾燥は「年のせい」で治療できない局所エストロゲン製剤などの治療選択肢があり、改善が見込めることがある
GSMはほてりと同時に起きるGSMは閉経後に年単位で進行することが多く、ほてりがおさまった後に出てくることもある
性交痛は「心理的なもの」エストロゲン低下による組織変化(萎縮・菲薄化)が主因のことが多い
局所エストロゲンは全身HRTと同じリスク局所製剤は全身への吸収が少なく、リスクプロファイルが異なる場合があるが、詳細は医師判断が必要

根拠に基づく一般向け整理

GSMとは何か

GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)は、閉経後のエストロゲン低下によって泌尿器・生殖器の組織が変化し、さまざまな不快症状が現れる状態の総称です(※1)。以前「萎縮性膣炎」と呼ばれていたものを含む、より広い概念です。

主な症状

  • 生殖器症状:膣の乾燥感・灼熱感・かゆみ、性交痛(性交時の出血・疼痛)
  • 泌尿器症状:頻尿、尿意切迫感、尿失禁(腹圧性・切迫性)、繰り返す膀胱炎(※1)(※2)
  • 心理的影響:性生活の回避、パートナーとの関係の変化(→ #25 参照)

症状は閉経直後より、年単位で時間をかけて進行することが多いとされています(※2)。

なぜ「言えない」のか

GSMの症状は、プライベートな部位に関わるため「恥ずかしい」「我慢するものだ」と感じやすい領域です。しかし、調査では閉経後女性の多くが何らかのGSM症状を経験しているとされており(※2)、決してまれな状態ではありません。オンライン診療は、こうした「対面では話しにくい」悩みを相談しやすい場の一つです。

治療の選択肢について(処方詳細は医師判断)

現在利用可能な治療アプローチとして、一般的に以下が挙げられています(※1)(※3):

  • 非ホルモン性保湿剤・潤滑剤:市販品も含め、乾燥感の一時的な緩和に用いられる
  • 局所エストロゲン製剤(クリーム・リング・坐剤等):膣・尿道局所への作用を主目的とした製剤。全身HRTとは吸収量・リスクプロファイルが異なるとされるが、個人の状況によって適否が変わる
  • 全身性HRT(→ #32):GSMを含む更年期症状全体への対応として選択されることもある
  • 骨盤底筋トレーニング:尿失禁への補助的アプローチ

どの選択肢が自分に合うかは、症状の種類・強度・他の既往歴をふまえた医師の判断が必要です。

繰り返す膀胱炎との関係

閉経後に膀胱炎を繰り返す場合、局所エストロゲンの低下による膣内フローラ・尿道周囲組織の変化が背景にある可能性があります(※3)。抗生剤での対処が続いている場合は、婦人科・泌尿器科への相談を検討してください。


今日から試せる行動

  • 「膣の乾燥」「性交痛」「頻尿」のうち気になる症状を書き留め、いつ頃から始まったか確認する
  • SMIの10項目(→ #31)に「性器の違和感」が含まれているので、スコアに加える
  • 市販の膣用保湿剤の使用を検討し、効果が不十分なら受診へ
  • 「婦人科に相談する」のハードルが高い場合は、オンライン相談を活用する

受診・紹介の目安

以下に該当する場合は受診を検討してください:

  • 性交痛・膣の乾燥感が日常生活・パートナーとの関係に影響している
  • 尿漏れ・頻尿が仕事や外出の妨げになっている
  • 膀胱炎を年に2回以上繰り返している
  • 不正出血を伴う(子宮内膜・頸部の評価が必要)
  • 市販品で改善せず、症状が続いている

免責

本記事は一般向けの健康情報であり、個人の診断・治療の代替ではありません。局所製剤を含む治療の適否は必ず医師にご相談ください。


参考文献

国内文献

  • ※4:日本産科婦人科学会/日本女性医学学会 編「女性医学ガイドブック 更年期医療編 2019年度版」
  • ※5:寺内公一「更年期外来」内科 2021年127巻5号(202105_内科臨床と性差/更年期外来.pdf

国際文献

  • ※1:Portman DJ, Gass ML; Vulvovaginal Atrophy Terminology Consensus Conference Panel. Genitourinary syndrome of menopause: new terminology for vulvovaginal atrophy from the International Society for the Study of Women’s Sexual Health and the North American Menopause Society. Menopause. 2014;21(10):1063-1068.
  • ※2:Nappi RE, et al. Menopause Practice: A Clinician’s Guide. Menopause. 2022 (update references).
  • ※3:The Menopause Society (NAMS). 2023 Menopause Hormone Therapy Position Statement. Menopause. 2023;30(6):573-590.