女性の更年期 #29

睡眠・痛み・更年期が重なったとき——どの専門家から始めるか


結論(先に)

睡眠障害・慢性的な痛み・更年期症状の3つは互いに悪化し合う関係にあります(※1)。どれかひとつだけを治療しても改善しにくい場合があり、複数の要因が重なっていることを認識することが大切です。まずはどの症状が最も日常生活に影響しているかを整理し、そこから受診先を決めることが現実的な出発点です。


読者の状況

  • 眠れない・痛い・ほてるといった複数の症状が重なっている
  • どの科に行けばよいか分からず受診を後回しにしている
  • 1つを治療しようとしても他の症状が邪魔をしている気がする
  • 主治医には全部話せていない

よくある誤解

誤解実際
「3つが重なっていたら全部同時に解決しなければならない」最も困っている症状から1つずつアプローチすることが現実的です
「睡眠は更年期が改善すれば自然によくなる」睡眠障害が独立した問題として固定化することがあります(→ sleep #6)
「慢性痛は整形外科だけの問題」慢性痛には睡眠・ホルモン・心理的要因が関与することがあります(→ sleep #39)

根拠に基づく一般向け整理

3つの悪循環のメカニズム

更年期 → 睡眠障害:ほてり・発汗・夜間覚醒がエストロゲン低下に伴い出現します(→ sleep #6)。睡眠の質が低下すると痛みへの感受性が高まります(※1)。

睡眠障害 → 慢性痛の増悪:慢性的な睡眠不足は痛みの中枢感作(脳が痛みを過大に認識する状態)に関与することが知られています(※2)(→ sleep #39)。

慢性痛 → 睡眠障害の悪化:痛みで目が覚める・寝つけないという悪循環が生じます。更年期のほてりと重なるとさらに入眠が妨げられます(※1)。

3つが揃ったとき:いずれか1つだけの治療では効果が限定的なことがあり、複数科の連携や包括的アプローチが有効な場合があります(※3)。

どの専門家から始めるか——目安の考え方

以下を参考に、今一番困っている症状から受診先を決めることをお勧めします。

最も困っていること最初に相談する科の目安
ほてり・発汗・生理不順など更年期症状婦人科・女性外来
眠れない・夜中に目が覚める睡眠外来・精神科・内科
関節痛・筋肉痛・腰痛整形外科・リウマチ科(自己免疫疾患の除外も)(→ #28)
気分の落ち込み・意欲低下精神科・心療内科(→ #35)

かかりつけ医(内科・家庭医)がいる場合は、3つの症状をまとめて相談し、適切な専門科への紹介を依頼することも一つの方法です。

自分でできる整理の仕方

受診前に以下を書き出すと、医師への説明が伝わりやすくなります。

  • 各症状がいつ頃から始まったか
  • 1日のうちで最も困る時間帯
  • 睡眠の状態(寝つき・中途覚醒・起床時の疲労感)
  • 痛みの場所・強さ(0〜10の点数でも可)
  • 現在服用している薬・サプリ

今日から試せる行動

  • 睡眠・痛み・更年期症状の3つについて、それぞれ1週間の記録をつける
  • 最も日常生活に影響している症状を1つ選び、受診先を決める
  • かかりつけ医に「3つの症状が重なっています」と伝えてみる

受診・紹介の目安

以下の場合は早めに医療機関を受診してください。

  • 3つの症状すべてで日常生活が著しく妨げられている
  • 睡眠時間が慢性的に4〜5時間以下で改善しない
  • 痛みが悪化して動けない時間がある
  • 気分の落ち込みが2週間以上続く(→ #35)

免責

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替ではありません。個別の症状評価は医師にご相談ください。


参考文献

国内文献

  • ※1:寺内公一「更年期外来」内科 2021年127巻5号
  • ※2:三島和夫「睡眠と慢性痛」ペインクリニック 2020年

国際文献

  • ※3:Kravitz HM, et al. “Sleep disturbance during the menopausal transition in a multi-ethnic community sample of women.” Sleep. 2008;31(7):979-990.