女性の更年期 #25

更年期と性生活の変化——GSMと「我慢しなくていい」という選択肢


結論(先に)

閉経後に感じる乾燥感・不快感・性交痛の多くは、GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)という医学的な状態として整理されています(※1)。「更年期だから仕方ない」と我慢し続ける必要はなく、婦人科や泌尿器科で相談できる選択肢があります。ご自身の状態を言葉にして専門医に伝えることが、最初の一歩です。


読者の状況

  • 閉経後から乾燥感や不快感が続いているが、誰にも言えずにいる
  • 性交痛があり、パートナーとの関係に影響が出ている
  • 「更年期のせい」と思っていたが、医療で対応できるか知りたい
  • 婦人科に相談していいテーマなのか、言葉が見つからず受診を躊躇している

よくある誤解

誤解実際
「閉経後の身体の変化はすべて自然なこと、治療しない方がよい」GSMは治療の選択肢がある医学的な状態です
「性生活のことは婦人科で話しにくい」婦人科・泌尿器科では日常的に相談を受けており、専門家に相談するのが適切な対処法です
「ホルモン療法しか選択肢がない」保湿剤・局所エストロゲン製剤・生活習慣の調整など複数の選択肢があります

根拠に基づく一般向け整理

GSMとは何か

GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause:閉経関連泌尿生殖器症候群)は、エストロゲン低下に伴う膣・外陰・泌尿器の変化を包括する医学用語です(※1)。乾燥感・刺激感・灼熱感・性交時の不快感・排尿症状(頻尿・尿漏れなど)が含まれます。かつて「萎縮性膣炎」と呼ばれていた概念を拡張したもので、閉経後女性の約50〜60%が何らかの症状を経験するとされます(※2)。

「更年期のせい」で我慢しなくてよい理由

GSMの症状は、ほかの更年期症状(ほてり・発汗など)と異なり、時間が経っても自然に改善しにくい傾向があります(※1)。そのため、「いずれよくなる」と放置することは必ずしも適切ではありません。現在は局所作用の治療法(非ホルモン保湿剤・局所エストロゲン製剤など)が整備されており、全身的なHRT(Hormone Replacement Therapy:ホルモン補充療法)が適応でない方にも選択肢があります(※3)(→ #33)。

専門医に伝えやすい言葉

受診時に自分の状態を伝えることが難しく感じる方もいます。「乾燥感や不快感がある」「日常生活や人間関係に影響している」という言葉でも十分に伝わります。婦人科医・泌尿器科医はこれらの相談に日常的に対応しています。パートナーとの関係への影響も、相談の理由として正当なものです。

パートナーとのコミュニケーション

更年期における身体の変化は、本人だけでなくパートナーにとっても理解が必要なことがあります。医療機関のパンフレットや信頼できる情報源を一緒に確認することが、相互理解の助けになることがあります。なお、本記事は特定の性的指向・関係性を前提とせず、すべての方の状況を尊重します。


今日から試せる行動

  • 現在感じている症状(いつ頃から・どのような状態か)を短くメモして婦人科受診の準備をする
  • 「GSM」「閉経後の乾燥」というキーワードで信頼できる医療機関の情報を探す
  • 市販の膣保湿剤(水溶性・無香料)の使用を婦人科に相談してみる

受診・紹介の目安

以下の場合は早めに婦人科・泌尿器科を受診してください。

  • 乾燥感・痛みが日常生活に支障をきたしている
  • 性交時の出血が繰り返し起きる(悪性疾患の除外が必要)
  • 尿漏れ・頻尿・排尿時痛が新たに出現・悪化している
  • 症状が精神的な負担になっている

免責

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としており、診断・治療の代替ではありません。個別の症状の評価と治療方針の決定は医師にご相談ください。


参考文献

国内文献

  • ※1:日本産科婦人科学会・日本女性医学学会「女性更年期医療ガイドライン」(閉経後泌尿生殖器症状の項)
  • ※2:寺内公一「更年期外来」内科 2021年127巻5号

国際文献

  • ※3:Portman DJ, Gass ML. “Genitourinary syndrome of menopause: new terminology for vulvovaginal atrophy from the International Society for the Study of Women’s Sexual Health and the Menopause Society.” Menopause. 2014;21(10):1063-1068.