女性の更年期 #17

更年期の体重変化と代謝——生活でできるアプローチ


結論(先に)

閉経後はエストロゲン低下により内臓脂肪が蓄積しやすくなり、基礎代謝も低下する傾向があります(※1)。「食べていないのに太る」という感覚は多くの場合ホルモン変化によるもので、個人の意志の問題ではありません。筋肉量の維持・食事内容の見直し・有酸素運動の三つを組み合わせることで、体重管理の効率が上がる可能性があります(※2)。


読者の状況

  • 閉経前後から体重が増えはじめ、以前と同じ食事量なのに太りやすくなった
  • 腹部に脂肪がつきやすくなり、体型が変わった気がする
  • ダイエットを試みても効果が出にくく、モチベーションが下がっている
  • 「更年期太り」は避けられないものだと諦めている
  • 体重だけでなく血糖・コレステロールの数値も気になりはじめた

よくある誤解

誤解実際
更年期の体重増加は食べすぎが原因ホルモン変化による代謝・脂肪分布の変化が主な要因(※1)
カロリーを減らすだけで解決できる筋肉量が落ちると代謝がさらに低下するため、極端な制限は逆効果になる場合がある(※2)
体重が増えても見た目の問題だけ内臓脂肪増加は心血管リスクや糖尿病リスクとも関連する可能性がある(→ #22)(※1)
運動しても閉経後は効果が出ない筋力トレーニングと有酸素運動の組み合わせは閉経後も有効とされる(※2)

根拠に基づく一般向け整理

閉経後に内臓脂肪が増えやすい理由

エストロゲンには「皮下脂肪への脂肪蓄積を促し、内臓脂肪を抑制する」働きがあるとされています(※1)。閉経後にエストロゲンが低下すると、脂肪の蓄積部位が皮下から腹部内臓へと移行しやすくなります。これにより体重の変化が小さくても「お腹まわりが増えた」という変化が起きやすくなります(※1)。

また閉経後は基礎代謝が低下するため、同じカロリー摂取でも消費エネルギーが相対的に減少します(※2)。

筋肉量維持の重要性

加齢に伴い筋肉量は自然に低下しますが(サルコペニア)、更年期以降はホルモン変化がこれを加速する可能性があります(※2)。筋肉は安静時でも多くのエネルギーを消費するため、筋肉量の維持が代謝の底上げにつながります。

週2〜3回の筋力トレーニング(スクワット・体幹トレーニングなど)は、閉経後の体組成維持に有効とされています(※2)。激しい運動でなくても、自体重トレーニングから始めることができます。

食事の三つのポイント

急激なカロリー制限は筋肉量をさらに低下させるため推奨されません(※2)。以下のような見直しが参考になります。

  • タンパク質を意識して摂る:肉・魚・卵・大豆製品を毎食含めることで筋肉量維持を助ける
  • 精製糖質を減らす:白米・パン・菓子類を少し減らし、野菜・雑穀を増やす
  • 食べる順番の工夫:野菜・タンパク質を先に食べることで血糖値の急上昇を抑えやすくなる(※2)

有酸素運動の組み合わせ

ウォーキング・水泳・自転車などの有酸素運動は内臓脂肪の燃焼に効果的で、週150分程度(1回30分×5日など)が目安とされています(※2)。更年期症状として睡眠の乱れがある場合、運動は睡眠の質改善にも寄与する可能性があります(→ #6)(→ sleep #1)。


今日から試せる行動

  • 毎食にタンパク質(卵1個・豆腐半丁・魚一切れなど)を意識して加える
  • 通勤や買い物で歩く時間を10分増やす(まず習慣化が優先)
  • スクワット10回×2セットを朝の習慣にしてみる
  • 体重だけでなくウエスト周囲径も月1回測定して変化を把握する

受診・紹介の目安

以下の場合は婦人科・内科への受診をお勧めします。

  • 赤旗症状:体重が短期間(1〜2か月)で5kg以上増減した(甲状腺疾患・糖尿病など他疾患の除外が必要)
  • 空腹時血糖・HbA1c・コレステロールの数値に異常を指摘された
  • 食事・運動を3か月以上続けても体重・体型に変化がなく、倦怠感が続く
  • BMIが25以上で高血圧・脂質異常が重なっている(→ #22 も参照)

免責

本記事は一般向けの健康教育を目的としており、個別の診断・治療方針を保証するものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

  • ※1 河端恵美子. 現代女性と更年期障害. 公衆衛生 2010; 74(2): 99–108.
  • ※2 厚生労働省. 健康づくりのための身体活動基準2013. 2013.

国際文献

  • ※3 Lovejoy JC, et al. Increased visceral fat and decreased energy expenditure during the menopausal transition. Int J Obes 2008; 32(6): 949–958.
  • ※4 Bea JW, et al. Resistance training predicts 6-yr body composition change in postmenopausal women. Med Sci Sports Exerc 2010; 42(7): 1286–1295.