女性の更年期 #16

骨の健康——閉経後に注目される理由と生活でできること


結論(先に)

閉経後はエストロゲンの減少によって骨密度が低下しやすくなり、骨折リスクが高まる可能性があります(※1)。ただし、運動・食事・日光浴など生活習慣で対応できる部分も大きく、「気づいたときが対策の始め時」です。骨密度測定は整形外科や婦人科で受けることができるため、50代前後を目安に一度確認することをお勧めします(→ #36)。


読者の状況

  • 閉経後に「骨が弱くなる」と聞いたが、何をすればよいかわからない
  • 親が骨粗しょう症になっており、自分も心配している
  • サプリや食事で骨を強くできるのか知りたい
  • 骨密度の検査をどこで受ければよいかわからない
  • 「骨折しやすい」と言われたことがあるが具体的な対策が不明

よくある誤解

誤解実際
骨粗しょう症は高齢になってからの話閉経後10年間は特に骨密度が急低下しやすい(※1)
カルシウムをたくさん摂れば骨は大丈夫カルシウムはビタミンD・運動との組み合わせが重要(※2)
転ばなければ骨折しない骨密度が低いと日常動作でも骨折が起きることがある(※1)
男性と女性で骨の強さは変わらない女性はエストロゲン保護が失われる分、閉経後に骨折リスクが上がりやすい(※1)

根拠に基づく一般向け整理

エストロゲン減少と破骨細胞の関係

骨は常に「壊す(破骨細胞)」と「作る(骨芽細胞)」のバランスで維持されています。エストロゲンには破骨細胞の働きを抑制する作用があるため、閉経後にエストロゲンが低下すると破骨が骨形成を上回りやすくなります(※1)。この変化は閉経後5〜10年で特に顕著で、年間1〜3%程度の骨密度低下が起きることがあるとされています(※1)。

骨折の場所と生活への影響

骨粗しょう症に関連する骨折は「脆弱性骨折」と呼ばれ、特に多いのは以下の部位です(※1)。

  • 椎体(背骨):転倒がなくても圧迫骨折が起きることがある。身長低下・腰痛につながる
  • 大腿骨頸部(股関節付近):転倒時に骨折しやすく、寝たきりのリスクに直結する
  • 手首(橈骨遠位端):転倒時に手をついて骨折することが多い

椎体・大腿骨頸部の骨折後は、手術・長期入院を要することも多く、整形外科との連携が重要です(→ sleep #41・#42 で術後睡眠との接続も参照)。

生活習慣でできること

骨密度維持には以下の三つが特に重要です(※2)。

  • カルシウム:乳製品・小魚・豆腐などから1日700〜800mg程度を目安に(※2)
  • ビタミンD:日光浴(週2〜3回、15〜30分程度の外出)と魚・きのこ類から補給。カルシウム吸収を助ける(※2)
  • 荷重運動:ウォーキング・スクワットなど骨に負荷をかける運動が骨芽細胞を刺激する(※2)

喫煙・過度の飲酒は骨密度を低下させる要因になる可能性があるとされています(※1)。

骨密度検査について

骨密度はDXA法(二重エネルギーX線吸収測定)で測定でき、整形外科や内科、一部の婦人科でも受けられます。閉経を迎えた方や50歳以上の方は一度測定しておくと基準値として活用できます(→ #36 で詳細)。


今日から試せる行動

  • 毎食にカルシウムを含む食品(乳製品・豆腐・小魚など)を一品加える
  • 晴れた日に15〜20分、外を歩く習慣をつける(日光浴+荷重運動の一石二鳥)
  • かかりつけ医や整形外科に骨密度測定の相談をしてみる
  • 転倒予防のために自宅の段差・浴室マットを確認する

受診・紹介の目安

以下の場合は早めに整形外科・婦人科・内科への受診をお勧めします。

  • 赤旗症状:転倒していないのに背中・腰に強い痛みが出た(椎体骨折の可能性)
  • 赤旗症状:身長が2cm以上低下した
  • 骨密度検査でYAMスコアが70%以下と言われた
  • 閉経後5年以上が経過し、まだ骨密度を測ったことがない
  • 親族に骨粗しょう症・骨折の既往がある

免責

本記事は一般向けの健康教育を目的としており、個別の診断・治療方針を保証するものではありません。症状が気になる場合は医療機関を受診してください。


参考文献

国内文献

  • ※1 日本骨粗鬆症学会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版. 2015.
  • ※2 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). 2020.

国際文献

  • ※3 Camacho PM, et al. American Association of Clinical Endocrinologists/American College of Endocrinology Clinical Practice Guidelines for the Diagnosis and Treatment of Postmenopausal Osteoporosis—2020. Endocr Pract 2020; 26(Suppl 1): 1–46.
  • ※4 Eastell R, et al. Pharmacological management of osteoporosis in postmenopausal women: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 2019; 104(5): 1595–1622.